フラクタル次元



 無限の世界には,有限の世界と違って, 我々が予想もつかないような不思議なことが起こる。
 正三角形\( \rm{ ABC }\) において,\( \rm{ AB, AC }\) の中点をそれぞれ \( \rm{ P_{1}^{(1)}, P_{2}^{(1)} } \) とし, \( \rm{ BC } \) の中点を \( \rm{ Q_{1}^{(0)} } \) とする。次に, \( \rm{ P_{1}^{(1)}B, P_{1}^{(1)}Q_{1}^{(0)}, P_{2}^{(1)}Q_{1}^{(0)}, P_{2}^{(1)}C } \)の中点をそれぞれ \( \rm{ P_{1}^{(2)}, P_{2}^{(2)}, P_{3}^{(2)}, P_{4}^{(2)} } \) とし, \( \rm{ BQ_{1}^{(0)}, Q_{1}^{(0)}C } \) の中点をそれぞれ \( \rm{ Q_{1}^{(1)}, Q_{2}^{(1)} } \) とする。
このとき,関係 \begin{eqnarray} \rm{AB} + \rm{AC} &=& \rm{P_{1}^{(1)}B} &+& \rm{P_{1}^{(1)}Q_{1}^{(0)}} + \rm{P_{2}^{(1)}Q_{1}^{(0)}} + \rm{P_{2}^{(1)}C } \nonumber \\ &=& \rm{P_{1}^{(2)}B} &+& \rm{P_{1}^{(2)}Q_{1}^{(1)}} + \rm{P_{2}^{(2)}Q_{1}^{(1)}} + \rm{P_{2}^{(2)}Q_{1}^{(0)}} \nonumber \\ & & &+& \rm{P_{3}^{(2)}Q_{1}^{(0)}} + \rm{P_{3}^{(2)}Q_{2}^{(1)}} + \rm{P_{4}^{(2)}Q_{2}^{(1)}} + \rm{P_{4}^{(2)}C} \nonumber \\ \end{eqnarray} が成立する。 この操作を何回繰り返しても,折れ線の長さの和は常に一定で辺\( \rm{AB} \)と \( \rm{ AC } \)の長さの和に等しい。 この操作を無限に繰り返すと,折れ線は辺BCと一致するように埋め込まれる。すなわち,
「\( \rm{ AB + AC = BC } \)」という関係が成立する。 無限の世界では「\( \rm{ 1+1=1 } \)」は正しい等式である。(? ? ?)  これに少し関連する話として,フラクタル次元について紹介しよう。 次元とは,「点の位置を表すのに必要な座標の数」のことである。すなわち,直線は1次元,平面は2次元,空間は3次元ということになる。 今から1世紀ほど前(1890年),ペアノは“ペアノ曲線”と呼ばれる正方形を埋め尽くす連続な曲線を発見した。(右図参照) ペアノ曲線は曲線だから“1次元”なのか,それとも正方形を埋め尽くしているのだから“2次元”なのか。複雑に入り組んだ線,例えばフラクタル図形に対して,次元(相似次元)をどう定義すべきか。 1次元で線分を2倍にすると長さは2倍,2次元で正方形を2倍にすると面積は22倍,3次元で立方体を2倍にすると体積は23倍になる。これを一般化して,次のように次元をとらえることができよう。ある図形をr倍に相似拡大すると,その大きさがrd倍になる指数dを,その図形の次元と定めよう。  上図のような図形を考える。まず,正三角形ABCを考える。この正三角形から各辺の中点を結んでできる正三角形を1個取り除いて,3つの正三角形からなる図形を考える。次にその3つの正三角形から各辺の中点を結んでできる正三角形を3個取り除いて9個の小さな正三角形からなる図形を考える。この操作を繰り返してできる図形を考える。この図形をXとする。この図形の面積は0である。実際に,△ABCの面積をSとすれば,取り除かれた正三角形の面積の総和は   S+3? S+32? S+?= =S である。この図形Xを2倍に拡大すると,大きさが3倍になるので,2d=3,すなわち  d=log23= =1.5849625? である。この次元の定義は,相似な図形に限る。もっと一般的な次元の定義とし,ハウスドルフ次元がある。(難しくて私もよくわからない)  一般に,整数とは限らない次元をフラクタル次元という。  右図のように,二等辺三角形ABCから順に正三角形を1個,2個,22個,23個,??を取り除いてできるコッホ曲線は,( )d=2より,その次元がd= =1.26 ??である。  このようにして,いろいろなフラクタル図形の次元が計算できる。1次元と2次元の間に新しい次元を考えるというアイディアがすばらしい。